はじめまして、リングプランナーの飯田馨です。
子供の頃、結婚指輪をつけることに憧れを抱いた人は多いと思います。日本では結婚する時には必ず指輪を交換する習慣を目にしているからです。だから、結婚するなら結婚指輪を購入するのは当たり前になっています。しかし、ある調査の結果から表面的な価値だけを訴求した今の結婚指輪選びの情報だけでは不十分で、この時代のニーズにあった結婚指輪の新しい価値が求められているのです。
時代のニーズにあった結婚指輪の価値とは?
まず最初に、結婚指輪がこれまでどのような存在であったのか?その根源から紐解いていきましょう。結婚指輪の歴史は、9世紀のカロリング朝の時代まで遡ります。当時、王に仕えた大司教ヒンクマルの言葉として「神が結びたもう者達を人間が離さないように、忠誠と愛の象徴、夫婦合一の紐」とカトリック教会の記録には残っています。
忠誠と愛の象徴
11世紀にはキリスト教と共に神への契約の証として指輪交換の儀式として広がっていきます。中世14~16世紀になると、「永遠なるものと天は、共に丸く、形はその象徴である」と結婚指輪を贈る理由は、恋人たちの相思相愛の念を、輪のごとく巡り続ける愛の誓いとして広がっていきます。
愛の誓い
また、結婚指輪を左手薬指にするのは古代ローマが起源とされています。ローマ人の解剖学では左手薬指の血管が心臓に直結していると考えられていました。また、心臓の中には感情の中心があると考えられていたことから、「愛の血管」がある指として左手薬指にはめる習慣が生まれた。
しかし、他の諸説では、契約、奴隷、束縛など現代のように男女平等ではない時代には、男性が女性を支配するための道具としての歴史もありました。
いかがでしたでしょうか?わたしたちにとって憧れの存在の結婚指輪には、時代によってさまざまな意味が込められていたのです。
指輪交換の儀式自体に重きを置いている習慣が強い
さて、今の結婚指輪の事情はどうなっているかと言いますと、結婚指輪の取得率98%と現代の日本には結婚指輪を交換するという文化が確実に根付いています。
引用元:http://bridal-souken.net/research_news/2014/01/post-d280.html
しかし、「結婚指輪」に関する実態調査では、8割以上の男女が「結婚指輪は常につけていて欲しい」と回答。実態は3割以上がつけていないとの結果が出ています(※1)。
この原因のひとつとして日本では、世間一般に実際に結婚指輪をつけることではなく、指輪交換の儀式自体に重きを置いている習慣が強いと言えるのではないでしょうか。
※1「結婚指輪」に関する実態調査 引用元:http://www.weddingpark.net/girlsstylelabo/research/2013/08.html
この中では、「結婚指輪をする意味は、愛の証と言うよりも、本人同士の充実感や満足感に繋がるもの」また、「周りに自分は結婚しているとアピールするものだと解釈し、ふたりの絆の深さは結婚指輪をするかしないかでは決まらない。」(※2)と言った意見もありました。これは世間から夫婦仲を結婚指輪の有る無しを判断基準とする考えに対して明らかに疑問を抱いた意見だと言えます。
※2 女性が結婚指輪をつけない理由 引用元:http://matome.naver.jp/odai/2135780834551907401
さらに、日本では結婚指輪の意識は、男女間でも変化していることも注目するべき点です。最近では、結婚指輪をする男性が増加傾向にあり、反対に女性が減少傾向にあります。
また、「結婚後の結婚指輪を普段身につけているか」とのアンケート調査結果からは、今つけたいと思っているカップルの中には、結婚指輪を交換しても結婚後のお互いの考えの変化、または本人の諸事情によりつけられないという現状も明らかになっています。
結婚指輪の歴史と新しい結婚指輪の存在価値
このコラムを書くにあたりネットからも情報を収集しました。結婚指輪に関する討論がネット上でも激しく繰り広げられているのは、結婚指輪への関心がとても強いということは間違いない事実です。
これらの結果から言えることは、結婚指輪をしない理由として、そもそも結婚指輪をする意味がないと考える人が今後も増えていく傾向にあることに私は懸念しています。
懸念とは、表面的な価値だけを訴求した今の結婚指輪選びの情報だけではもう不十分だということです。これまでの結婚指輪の歴史を継承し、この時代のニーズにあった結婚指輪の新しい価値を創造する提案が求められていると考えます。
夫婦合一の紐。つまり家族(パートナー)としての絆です。
ここで、自分の子供の頃に戻って思い出してみてください。「結婚指輪をつけること」自体に憧れを感じていませんでしたか。つまり、誰かに教わるわけではなく自然に結婚指輪に対し、愛の証という意識を抱いていたはずです。
しかし、アンケート調査結果のように大人になると結婚指輪の意識が既婚の証など現実的かつ束縛的な契約のようなものとして抱く方も多いのです。今の日本では儀式自体のみを広め過ぎた習慣の結果でしかありません。また、大人になるにつれ、多くの経験の中で心の純粋性は損なわれてきます。
さらに、日本特有の「結婚」観について過剰なまでの情報によって理想と現実との間に偏りが生まれ、まさにバランスが悪い状態だと考えます。これから結婚指輪の在り方はまさにバランスの良い状態に戻すことだと考えます。戻すとは、もっと「愛」にフォーカスするということです。
なぜ、「愛」なのか。それは、古代ローマ時代より長い結婚指輪の歴史からわかるように、人々にとって結婚指輪は愛の証としての精神的意味合いがとても強いということは間違いありません。精神とは心であり想いです。どの時代でも決して無くなるということがなかったのです。指輪には想念の力が強く込められているということを理解しなければなりません。
それでは、これからの時代に求められる結婚指輪とはなんでしょうか?
理想の結婚指輪とは、ずっと身につけたくなる理由がある結婚指輪
それが自己愛の証です。自分を愛することが「自己愛」です。「自己愛」とは「自己の幸福感」とも言えるでしょう。自分にとって幸福感のある結婚指輪であれば、自分から身につける理由を探しはじめます。つまり、束縛する自分にとって邪魔なものという意識はなくなります。それ以上に身につけることが自分にとって良い選択になるからです。
『感動と喜びを増やす』とは、この「幸福感」に気づくことでもあります。人が本当に感動と喜びを得るのは、何かを受け取ったときではなく、何かを達成したときや、何かを与えて相手が喜んでくれた時です。結婚指輪はまさにギフトなのです。
これからの結婚指輪を身につける意味は、心理面からも毎日の生活の中で起こる不調和や失敗に対する恐れ、恐怖、圧力などによる緊張の苦しみから、和らげるものでなければなりません。自己愛の証としての結婚指輪は、健康や家庭、対人関係、仕事が良い方向へ導く意味があるとすればとても幸せなことではありませんか。
ふたりにとって幸せな理想の結婚指輪とは、ずっと身につけたくなる理由がある結婚指輪だと考えます。
最後に、これからの時代にあった結婚指輪を持つ意味と交換する習慣を再構築することができれば、現代の社会問題を減らし、明るく幸せな家庭を作る手助けとなると確信しています。
参考サイト:
ROAD OF THE MARRIAGE RING
http://www.nagano-c.ed.jp/seiho/risuka/2006/2006-01.pdf
飯田馨(RINPLA)
既製品にはない自分らしさや想いを大切にした「感動と喜びを増やす手作り指輪」で支持を集めるリングプランナー。
http://wedding.iihito.link/archives/644